【できるのか?】意識を機械に移植してみる 「脳の意識 機械の意識」
人の意識を機械へ移植するという挑戦的な研究をしている渡辺正峰氏が書いた本。そんなSF映画みたいなことが本当にできるのか?と思いながら読みました。
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意識とは何か
そもそも意識とは何か?その本質は感覚意識体験(クオリア)であると言います。あなたは今、画面を見ながらこのブログを読んでくれています。この「読んでいる」「見ている」というのがクオリアになるのですが、当たり前すぎてなかなか理解しづらかったです。では、「読んでいる」「見ている」という体験はどこからきているのでしょうか?
脳は一風変わった電気回路に過ぎないが・・・
脳はニューロンと呼ばれる神経細胞があります。これらの細胞は電気的なやりとりをしていて、あるニューロンが他のニューロンから送られてきた電気信号を受け取り、それが一定の閾値を超えると別のニューロンに電気信号を送る。仕組みとしては単純です。
著者は脳は電気回路でしかなく、私達はニューロンの塊にすぎないと言います。身も蓋もないですが、そこからどう意識が生まれるのか?脳が電気回路なら、スマホは意識を持っているのか?それはスマホにしかわからないですよね。意識は主観なのですから。
スマホは人間が作ったものなので当然仕組みはわかっています。けれども、それに意識があるかどうかはわからないのです。同じ様に、脳の仕組みが完璧にわかったとしても、それに意識があるのかどうかはわからないのです。
著者はこの問題を「ハードプロブレム」と呼びます。そして科学はこの問題を解決する手段を持ち合わせていないのです。
もしかするとスマホは、あなたのLINEを覗き見してニヤニヤしているかもしれません。きもいですね。
デジタルフェーディングクオリア
今、あなたはリンゴを見ているとしましょう。そしてあなたの脳にある、1つのニューロンを人工的に作ったニューロンに置き換えます。人工ニューロンは置き換える前のニューロンと全く同じ働きをします。それを繰り返し、全てのニューロンを人工ニューロンに置き換えます。
この時、あなたの意識はどうなっているでしょうか?この思考実験の主張によると、置き換わったとしても意識はそのまま変わらないと言います。
著者は、この思考実験を元に、コンピュータでシミュレーションされたニューロンを使って置き換えようとします。これをデジタルフェーディングクオリアと言っています。
しかし、ここでも意識の問題が出てきます。結局は意識は客観的には理解できません。そこで著者は自身が実験台となって試そうとしています。やばいマッドサイエンティス・・・チャレンジ精神がすごいですね!
人の意識は2つ存在する
とても驚いたのですが、様々な実験により、私達の意識は右脳と左脳に1つずつ存在しています。それが何らかの仕組みによって1つに統合されているのです。
著者はこれを利用して先述した、コンピュータでシミュレーションされたニューロンを、半球(右脳または左脳)入れ替え、その時、自身の脳の意識と機械の意識が1つのものとして統合されれば、機械に意識が宿ったと結論付けられると主張します。
脳の中にある仮想現実システム
私達は夢を見ますが、夢は現実を忠実に再現していますよね。現実の物理法則から登場人物までリアルです。好きなアイドルもリアルに再現されます。脳はPS5も真っ青な高度な仮想現実システムを持っているのです。
このシステムは夢を見ている時だけではなく、覚醒中も稼働しています。手足を失ってしまった人が、まるで手足がそこにあるかのように感じる「幻肢」と呼ばれる現象がそれに当たります。脳が手足をシミュレーションしているのです。
脳の仮想現実システムが意識の源になっている可能性がある。このシステムはどう実装されているのか?著者は神経アルゴリズムである生成モデルを提唱しています。
神経アルゴリズム仮説
コンピュータの情報は、「0」と「1」で表現されています。しかし、この情報だけでは何の意味もありません。それを解釈するソフトウェアが必要になります。情報は解釈されて意味を持つのです。
では、脳における情報とは何でしょうか?それはニューロンの電気信号のやりとりになります。それを解釈するのが神経アルゴリズムであるというのです。
意識はアルゴリズムなのか?味気ない気もするが現実ってそんなものなのかなあ、という気もします。
提唱されている神経アルゴリズムの生成モデルは、まさにディープラーニングそのものなんですね。現実の情報を感覚器官が取り入れ、仮想現実システムとの差異を誤差逆伝搬を使って学習しています。
挑戦的で面白い
著者の研究は非常に興味深く、好奇心を掻き立てられました。同時に倫理的な問題も出てくるんだろうなあとも思いながらも、実現して欲しいですね。
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