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騙されやすい人は教祖様になってみよう

 普通の人が一から宗教を作ってみようという本。最終的には国教にまで発展させようとします。なんだかふざけたタイトルの本だなあと思いながらも、なぜが惹かれて読んでみたのですが、既存の宗教を利用して人の心理を突いた方法で信者を獲得する方法が書かれてすごく読みやすく説得力があり、ビジネスにも応用できるような内容です。



 この本に書かれている教団構築テクニックは一般のビジネスからオンラインサロン、詐欺に至るまで様々なところで散見されます。なので人の話をすぐ信じて騙されやすい人は騙す側の手法を知ることで防衛することもできます。そして無職やニートといった社会からつまはじきにされたような人も要注意で、そういった人たちを肯定することで信者に取り込もうと言及されています。

 著者は

宗教の本質は反社会性にある。

と述べています。つまり現代社会の価値観と会わない人が必ずいて、そういった人達を救おうと言うのです。その意味では、数ある宗教の中でもキリスト教はヤバイと語られています。

エスの反社会性は只事ではありません。罪びとである徴税人と平気でメシを食い、売春婦を祝福し、労働を禁じられた安息日に病人を癒し、神聖な神殿で暴れまわったのです。当時の感覚で言えばとんでもないアウトローで、もちろん社会の敵なので捉えられて死刑になります。

今でこそ世界最大の信者数を誇るキリスト教ですが、その創始者であるイエスというのは当時は大犯罪者とされていたのです。

彼らのような社会的弱者を救済し、神の祝福を与えるイエスは、どうしても反社会的にならざるをえないわけです。

 ただ、イエスも当時の価値観では異端とされていた人々を救おうと考えて、こういった行動に出たとされています。新興宗教というのは弱者の受け皿になってるんですね。もちろん新興宗教が悪いとは言えないし数百年したらメジャーな宗教になっているかもしれません。しかし過去のいかなる時代とも違って、現代社会はそういった団体や人間とSNSを通して繋がりやすくなっています。安易に身を寄せてしまったら後で後悔するかも。

 また、困っていない人に対しても、実は困っているんだと思わせて、不安を煽って信者を確保するとあります。

不安を抱いていない人に対し、「お前は実はすでに困っているんだぞ」と言うことは有効だということです。

具体例も出しています。

ちなみに現代において、この手法でもっとも成功している事例が「エコ」というアイデアでしょう。エコは私たちを常に「困った状態」にしています。このまま手をこまねいていると、近い将来地球環境が悪化して住めなくなってしまいますよ。私たちは既に困った状態にあるんですよ。

 こう言って私達を困った状態に持っていきます。そして困った状態を助けてくれる救済という解決法を与えます。

 これってマーケティングですよね。USJを劇的に変えた、たった1つの考え方で書かれている、消費者インサイトと言って消費者自身も気付いていない深層心理を刺激する方法があります。例えばUSJでクリスマスイベントを開催した際の広告では、娘を持つ父親に対して、「あなたの娘はすぐ大きくなりますよ。そうしたら一緒にクリスマスを過ごしてくれませんよ。一緒に過ごせるクリスマスはあと何回もないですよ。」といったことを表現しています。これは貴重な1回のクリスマスであることを強調して親の切ない心理を刺激して足を運ばせようとしたのです。

 こういった手法が宗教に限らずビジネスの世界でも当たり前のように使われているんです。

 この他にも教団を大きくするのに、信仰のモチベーションアップの為の方法や、お金を寄付させる方法だったり様々な手を使っています。

 現代においては教祖様は沢山います。インフルエンサーと呼ばれる人達ですね。簡単に繋がれるし、そういった人達に影響されて生き方を変えたりするのは良いのですが、将来の自分が振り返った時にどう思うかですよね。黒歴史にならなければいいのですが。やっぱり自分の軸となる考えを持つことって重要だなと。